生きものがく房《のにある》@越前美山

福井県美山発。我が家の犬猫インコのお話。都市育ち夫婦→移住した山里での生活のお話。野鳥観察日記もあるよ。初めての方はカテゴリー「初めての方はこちらへどうぞ」を閲覧あれ。登場人物や動物のこと書いてます。

ニホンオオカミは生きている?


西田智著「ニホンオオカミは生きている」 2007年 二見書房


この方、ニホンオオカミを撮影されました。
いや、学界的には「ニホンオオカミ」とは認められていないが(本書の中で、哺乳類分類学の大家、今泉吉典氏が「ニホンオオカミと確信している」と述べているが)。

その写真が本書には掲載されている。

「オオカミ犬なのでは?」とか、
「野生化した四国犬なのでは?」という疑問も挙げられているが、少なくとも私には「犬」には見えない。なんの概念もなく写真を見たら私は即座に「オオカミ」と答えてしまうだろう。

もっとも…。
私は哺乳類の分類に関してはほとんど素人だが(笑


しかしながら。

このニホンオオカミと思われる野生犬、どう見ても日本犬には見えないのに、ある日本犬専門家が「野生化した四国犬」と別書で言い切っているのである(本書内に叙述)。

いや、毛色が似てる四国犬はいてるかも知れんけど…、どう見ても写真の個体は日本犬には見えへんぞ?

体高体長比、尾の形、顔つき等々…素人から見ても、どれも日本犬のスタンダートからは外れているんじゃないのか?
(この他にも犬との相違点は本書内で数々述べられている)

なんか解せない。


それはともかく、この他面白いのは…。
形態からのアプローチをしている学者(分類学)は「ニホンオオカミに見える」と言っているのに対して、生態学者は軒並み「ニホンオオカミ」とは認めていない様子なこと。

確かに。
「生態」を少しかじった私としても「ニホンオオカミが生き残っている」という話しは、あの写真を突きつけられても俄かには信じられないのだ(もっとも、私以上の生態学的知識を西田氏は持っていると思われる)。

最後の確かな確認からすでに100年余り。
この間に種として存続するためにはある程度の個体数が必要だ。
にも関わらず、怪しい姿は見られていても「死体」や「骨」がまったく無いと言うのは…こちらも解せない。

にしても。
西田氏も本書で語っているように、これまでニホンオオカミを対象に大規模な調査はされていなかったことを考えれば、標本に値する遺物が見つかっていないのは有りうることで、このたび、分類学者が「ニホンオオカミとしか考えられない」という個体の目撃と写真があるのだから、もっと国なりが動き出してもいいんじゃないかと思う。
本書によれば、ニホンオオカミと思われる目撃情報は最近もあるとのことなので…国主導で「絶滅種」ニホンオオカミの「探索」をできないものだろうか?


個人的には、この本を読んで、私はまだニホンオオカミが生き残っていると信じたくなった(学生時代に読んだ世古孜氏の「ニホンオオカミを追う」で疑念を持っていたが)。

そして、同じフィールドワーカーとして、西田氏の行動力、情熱に敬意を表したい。
年齢的には決して若くは無いのに…脱帽なのである。

この本、野生動物が好きな方には、オオカミにそれほど興味がない方にも「読み物」として是非お勧めしたい。



余談その1
西田氏は本調査中に、九州では絶滅したと言われていた「ツキノワグマ」の足跡を発見している(本書内に写真掲載)。


余談その2
ニホンオオカミの絶滅は1905年の奈良県での捕獲が最後とされ、標本が残るものとしては確かにそれが最後であるが、1910年に福井城址で捕獲・撲殺されたオオカミが実質的に最後の確認であるとの論文が出ている。http://s02.megalodon.jp/2007-1006-2236-27/mytown.asahi.com/fukui/news.php?k_id=19000130701090001 なお標本は戦時中に消失し現在は残されていない。




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